短編小説。治らない中耳炎

中耳炎になった。一昨年の12月の事である。まだ治らない。
とはいえ痛くはない。ただ、耳の奥がねちゃねちゃしているのだ。
慢性中耳炎というものがあるらしい、それなんだろう。

中耳炎は急に発病した。きっかけは明らかである。
朝起きたとき、耳が詰まっていた。耳抜きをしたのである。
鼻をつまんで、息を鼻に送った。その時、風邪をひいていた。喉に細菌がいたのだろう。
それが耳に入ったのだろう。仕事に行き、夕方ごろから耳が痛み出した。
すぐに、会社の近所の病院に行った。
医者はチラッと耳の中を見て、「中耳炎だね、薬出しておくから。長引くと思うから」以上。
薬局で薬を買って帰宅した。
その時、右耳の聴力はゼロになった。何も聞こえなくなった。

夜、耳がどんどん痛み出した。耐えられるギリギリの痛みだ。
痛い痛い痛い。すっと、痛みが消えた。それと同時に、血と膿が耳から流れ出した。
驚いたが、痛みが消えたことが素直にうれしかった。そして、寝た。朝、起きたら枕が汚れていた。

それから、右耳の聴力が少しづつ回復していった。耳の詰まりも解消されていった。
だが、それから一年半経った今も、完治とは言えない。ねちゃねちゃしている。
このねちゃねちゃを取り除けないか、綿棒を突っ込んでみた。普通の太さのものは届かない。
細い綿棒は届いた。届いたが、あまり水分を吸ってはくれない。
ふと、ティッシュを「こより」のように細くねじって、それを耳に突っ込んでみた。
茶色でとろみのある汁がついてきた。臭いをかいでみた。嗅いだことのないにおいだった。
もわっとして、少し魚が腐ったような臭いも混じっている。
この臭いは癖になる。

この中耳炎はいつ治るのだろうか?一生、このねちゃねちゃと付き合っていくのだろうか?
まあ、人生そういうものだろう。劣化するのだ肉体は。新生するには、生まれるしかないのである。
骨折した場所も、回復はしたが完治はしていないずっと違和感が残っている。